研究概要


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1. 100テスラを超える超強磁場における物質科学


 一般に、強い磁場の発生には、電磁力に耐え、ジュール発熱を抑えたマグネットが必要です。電源の設計も同時に重要です。熱の発生は、時間を短くすることで軽減可能ですが、電磁力はそうもいかず、材料物質の機械強度で最大発生磁場が決まります。その限界は現在の技術では100テスラ近傍にあり、非破壊で100テスラ磁場の発生は難しく、高度な技術が必要です。従って、導体に電流を流す方式においては、100テスラを遙かに超える磁場は、破壊的な方法によってのみ発生されます。
 物性研究所では、一巻きコイル法、電磁濃縮法という、2つの方法を用いて、100 ~ 700 テスラの磁場を発生させることが可能です。磁場発生時間はマイクロ秒程度で短いですので、必ずしも精密測定が可能な場合ばかりではありませんが、超強磁場でのみ現れる未知の現象の探索にはロマンがあり、他では、そのような研究を行うことはできません。理論予測されているが確かめられてない興味深い現象や、相関が強くて通常の磁場では反応がほとんど無いような物質の研究を中心に、あっと驚く現象の発現・発見を夢見て研究に取り組んでいます。

2. 量子ビームを用いた強磁場磁気光学


 放射光や、自由電子レーザー、高強度中性子線などを最近、量子ビームと呼ぶようです。光や中性子は物質の電子状態、格子、各種の素励起、スピンを見ることができ、物質の中の量子の世界を垣間見る手段ですが、その光線の強度がすさまじく強いと、これまで弱くて観測できなかった現象が観測可能になったり、とてつもない短時間で測定が可能になり、ダイナミクスが追えたりと、画期的な展開が期待されます。
 強磁場下での物質中の量子世界をみるのに、量子ビームは格好の手段です。本研究室では、SPring-8やPhoton Factoryの放射光X線を用いた強磁場実験を技術開発から行い、推進しています。磁場発生時間の短いパルス強磁場は、量子ビームとの相性は抜群です。高強度量子ビームとパルス超強磁場の組み合わせにより、あらたな強磁場物質科学の発展が期待されます。

実験装置(嶽山研と共通):別ウィンドウが開きます。